Healing Discourse

ボニン・ブルー 小笠原巡礼:2013 第7部 ツバメウオ・スイム

 チャーターしたボートの船長が、ツバメウオがよく見られるというポイントへ、連れていってくれた。
 シュノーケル・セットを装着し、妻と共に足先からそっと海に滑り込む。
 ・・・・と、まるで時間[とき]の流れがそこだけ静止したかのように、30頭ほどのツバメウオの成魚が海中に静かに浮かんでいるのが、視界に入ってきた。   
 撮影役を妻と時折交替し合いながら、少しずつ距離を縮めていって、いろんな角度から帰神撮影した。

 近づきすぎて群れが離れていっても、水面で静かに待っておれば間もなくまた元の場所に戻ってくる。イルカよりよっぽどフレンドリーだ。水深もほどよく、妻にとって素潜りを練修する良い機会となった。

 格好の被写体をみつけると妻は、両手でカメラを構えたまま、1度も「耳抜き」することなく、被写体を追いかけてどんどん、どんどん深く潜ってゆく。
 耳抜きとは、鼓膜にかかる水圧を調整するため、50センチ~1メートルごとに鼻をつまんだまま鼻から軽く息を吐くようにする素潜りのテクニックを指す。水圧で耳が痛くなる前に行なう。
 が、帰神フォトの「獲物」をみつけると、妻は耳抜きを完全に忘れてしまうらしい。耳抜きなしで4~5メートルも潜れば、かなりの痛み、圧迫感が耳に起こるはずだが、そうならないということは、耳にかかる水圧をニュートラル化させる何らかの働きが無意識のうちに起きているのだろう。

 前々から妙だと思っていたが、ツバメウオたちとたっぷり泳いだ後、船上で妻にそのことを話したら、全然自覚がなかったらしく、驚いていた。
 これが帰神撮影でなく、単なる素潜りだと、水面から始めて小まめに耳抜きしていかないと、とてもやっていられないという。
 まったく奇妙な話だ。

 それではスライドショーを。
 鮮やかな蛍光色を発する黄色の腹ビレが印象的だ。