熱鍼法は心理方面にも卓効があります。たとえば胸郭、みぞおちなどのこわばった部分に刺激を行なうと、細かいことがいちいち気にならなくなり、おおらかな気持ちになれるのです。効果はすぐに実感できます。
ただし熱鍼法でこわばりをほどいていく前に、胸郭を不自然に締めつけていないかチェックすることが必要です。女性の場合、胸郭のブロック(滞り)はどうやらブラジャーと深い関係があるようです。
現代女性のほとんどが、毎日長時間ブラジャーをつけっぱなしで生活しています。私も以前は何の疑問も持たずにそうしていましたが、ある時あまりの窮屈さに辟易してブラジャーを投げ捨て、それ以来ここ10年以上というものブラジャーとは無縁の生活を送っています。ところが、成長期にブラジャーをつけはじめて胸郭を締め上げつづけたことで、今でも乳房やそのまわりにこわばりが残っているのがはっきり自覚できるのです。
ブラジャーとは一体どんなものだったか、確かめるためにもう1度つけてみることにしました。かつて持っていたものはすべて捨ててしまったので、昔着ていたビキニの水着(ワイヤー入り)をタンスの中からひっぱり出してきました。
つけてみて驚きました。こんなに窮屈なもので体を何時間も締めつけるのは、今の私にとっては拷問に等しいものです。1番不快に感じるのは、アンダーバストの肋骨部分にきつい締めつけと強い圧迫感があることです。その上、カップの部分が固い素材だと乳房が柔らかさをうしない、人工物でできているかのように感じられてきます。左右の肩ひもは重りのように両肩にのしかかってくるし、胸郭の動きが制限されるため深い呼吸ができない。それに視野までがせまくなる。拷問といったのは決して誇張ではありません。
女性の乳房というのは本来、とても柔らかくて弾力があり、体勢によって自由に形を変えていく性質を持っています。にもかかわらず、ブラジャーはそれをある一定の形に閉じこめ、乳房を固体化してしまいます。
女性読者の方は、上半身裸になって両手で両乳房を柔らかく包みこみ、上半身を左右にゆっくり揺らしてみてください。乳房は体の動きにあわせて、まるで水でできているかのように手の中でユラユラ揺れはじめます。乳房の柔らかさを感じながら体を動かしつづけると、全身にその柔らかさが伝わり、海の波に揺られる海草になったようで気持ちよく、しかも全身がとても楽なはずです。
反対にワイヤー入りのブラジャーをつけているつもりで、手を固くして乳房を手で覆い、乳房を固体のように感じながら左右に上半身を揺らしてみたらどうでしょう。ギクシャクとして動きも硬く鈍くなり、あちらこちらに痛みすら出てくるかもしれません。
そんな時は、固くした手をそっと緩めていき、ふたたび水のような乳房の柔らかさを全身で味わうと、「胸をなでおろしてほっとする」感覚とはこのことだと思えてきます。
ブラジャーをつけていると、なぜか乳房が体の前面のみについているように感じられます。が、手で乳房の形をよく確かめつつ触れあってみれば、実は体側にまで乳房の広がりがあることがわかります。あおむけになっている時には、鎖骨の方まで乳房が広がってくるし、四つんばいになった時には、立っている時とはまるで違う形になる。それを、いつも同じ形にとどめようとすることは不自然きわまりないし、害になるのではないかとさえ感じます。事実、きついブラジャーがリンパ腺の流れを阻害することで乳がんの原因になるという説も出はじめているといいます。
バストアップし、胸の谷間を強調するワイヤー入りのブラジャーが売られているのをよく見かけますが、ああいう形に補正されたバストを美しいと感じるのは、人類の歴史の中では今だけの一時的流行で、未来の人々が見たら、「昔の女性は大変だったなあ」と思うに違いありません。中国の纏足や、ヨーロッパのコルセットと同じで、どうしてこんな体を害するような習慣が女性の美しさとむすびつけられていたのか、理解に苦しむはずです。
アンコールワットのアプサラ
かつて女性原理が尊重された文明社会では、女たちは乳房を覆い隠すどころか、誇らしげにさらけ出していました。クレタ島の蛇女神像やアンコールワットに刻まれたアプサラのレリーフなど、世界中で多くの実例が報告されています。エフェス(現トルコ)のアルテミス像に至っては、上半身がたくさんの乳房に覆われているほどです(犠牲として捧げられた牛の睾丸という説もありますが)。
私の「ブラジャー有害説」に多くの女性たちが共感を示してくれて、ブラジャーをはずしはじめました。全員がもう2度とブラジャーなどつけたくないといっています。それほど、ブラジャーなしの生活は楽で、気分がよいのです。しかも胸が解放されたことで、乳房や乳首の感覚が格段によくなり、恋人との触れあいがより一層すばらしいものに変わったと報告している女性がほとんどです。
エフェス考古学博物館の「美しきアルテミス」
<2008.06.28>