Healing Sound

Mandragora 〜マンドラゴラ〜

2010年9月1日リリース


1. マンドラゴラ 15:18
2. 夜光貝 22:00
3. たまふりエチュード 32:01

1〜3 : 作・編曲、演奏/高木美佳
使用楽器/ヴァイカウント・オルガン、マリンバ、ヴィブラフォン、Yamaha TG500、E-MU Proteus Orchestra、Yamaha MOTIF-RACK 他

ラベル・デザイン/佐々木亮

<マンドラゴラ Mandragora>シークレットガーデン・シリーズ#2

自家栽培のマンドラゴラ(3年もの)。

 かつてヨーロッパで、魔女の薬草(ハーブ)として怖れられたマンドラゴラ(マンドレイク)。その根はエロティックに絡み合う裸の人間のような形をしており、土から引き抜くと世にも恐ろしい叫び声をあげ、それを聴いたものは発狂すると信じられていました。
 マンドラゴラの幻覚成分により、悪魔的な姿形をした自然神とのオルギア(乱交祭)を、魔女たちは内的にヴァーチャル体験していたといわれています。愛のマジックにも使われる薬草であり、その高い媚薬効果は旧約聖書にも記されています。

 この楽曲は3部構成になっています。
 第1部冒頭では、パイプオルガンによる序奏が鳴り響き、不気味で神秘的な声が重なります。妖しく官能的なヴァイブレーションを基調に、鼓動のようなリズムが刻まれ、魔女の夜宴の序幕が開始されます。
 第2部。祈りの声が静かに木霊(こだま)する暗い森の中。魔女たちは身にまとった衣を一枚一枚脱ぎ捨て、互いに身を寄せ、絡まり合いながら妖艶な求愛のダンスを舞い、森の神々との交合に備えます。
 第3部では、いよいよ魔女のサバトがクライマックスを迎えます。魔女たちの官能的で淫靡な吐息はさらに高まって幾重にも重なり、風や波のように渦巻く歓喜の振るえが森中を満たします。生まれたままの姿で狂ったように舞い踊り、森の神気を全身に受けてエクスタシーに打ち震える魔女たちは、集合的な霊的オーガズムに貫かれ、引き抜かれるマンドラゴラのような狂気と法悦の絶叫を繰り返すのです。

→試聴する(約1分)

<夜光貝>シェルコレクション・シリーズ#2

 珊瑚礁の奥にひそむ夜光貝(やこうがい)。
 子供の頭くらいもある大きな貝です。地味な外見ですが、殻の表面を削ると、瑞雲のような虹色に輝く美しい真珠層が現われてきます。この輝きが古来より螺鈿(らでん)細工の材料として珍重され、正倉院御物の五弦の琵琶にも夜光貝が使用されています。
 かつて夫から夜光貝のブレスレットをプレゼントされたのですが、それを一目見た瞬間、たくさんの微細な光の粒子がぎっしり詰まっているような美しさに魅せられてしまいました。
 光が当たると、表面だけでなく、奥の方から何層にも折り重なるように玉虫色の光が現われてくるから不思議です。これがレインボー・シャワーと呼ばれる真珠層で、螺鈿細工では薄片にスライスして使用します。

 さて、この楽曲では、短いモチーフが繰り返しつづく「ミニマル・ミュージック」の手法を取り入れながら、海のさまざまな様相を、音楽的に表現しています。
 例えば、ある音型Aが繰り返される中で、同時に別の音型Bが小さな音から始まって徐々に大きくなったり、あるいは徐々に小さくなったりします。この時、Aの方では音の強弱の変化はありません。
 何となく聴いただけでは、Aの中に隠れているBの強弱の波ははっきり聴き取れませんが、随所随所にこの仕掛けが施されており、聴いている人は身体の中で実際に波が前進と後退を繰り返すような不思議な感覚を味わえるでしょう。
 オーケストラやアンサンブルの演奏等で、すべての楽器が一斉にだんだん弱くなったり強くなったりすることはよくありますが、上記のような手法を用いた音楽は、今のところ私は聴いたことがありません。
 また、ある音型Cが持つ一定パターンのリズムに、別のリズム・パターンを有する音型Dが幾何学的にクロス・オーバーされることによって、波長の異なる複数の波が細かく重なって揺らぎを生み出します。
 中間部の多重録音のコーラスでは、マイクを少しはなれたところに2本立て、その間を歩いて行ったり来たりしながらヴォイスの録音をしました。コーラス自体の音形やリズムは一定ですが、左右2本のマイクの間をランダムに往復することで音の定位が様々に変化し、プリズムを通したように複雑に揺れ動く光の景色が、音的映像として感じられます。

たまふりエチュード

 ある夜、目覚めと眠りの間にある不思議な意識状態の中、激しい音楽が私の内側で突然鳴り響きました。その音楽とともにまぶたの裏に映し出されたのは、緋色の炎が燃え盛る中、火のような色をした女性が、炎の神殿で舞い踊る女神のごとく、たくさんの手足を妖しく揺らしながら迫ってくる姿でした。その時、内的に聴いた音楽が元になってできあがったのが、この9つの小曲からなる組曲です。
 この楽曲には、いわゆる「旋律」というものがなく、リズムを刻む打楽器群が一種の旋律的役割を果たしています。和音やコーラス、メロディー的な動きをするパートは打楽器の脇役に回り、普通は伴奏の役目をすることの多いリズム・パートを多元的に荘厳(しょうごん)します。
 有機的に絡まり合う色とりどりの粒子が、時にぶつかり、結ばれ、新たな粒子の糸を紡ぎ出し、たくさんの光の糸の集合体がまるで異世界の織物のように拡がります。
 この楽曲を創るにあたっては、これまでとまったく異なるやり方をとりました。それは、少し作業が進んだら、できあがった部分を聴きながら徹底的に何度も舞い踊る、というものです。
 足が自然にステップを踏み、全身に気持ちよい汗をかきながら舞っているうち、いつの間にかできあがっていたのが、この<たまふりエチュード>です。エチュードは、練修曲という意味です。
 ヒーリング・アーツの活発な練修をアシストするダンサブルな楽曲(死人をも立ち上がらせ、踊らせてしまわんばかりの)を夫からリクエストされていたので、ちょうどそれに応える作品となりました。「たまふり(生命の創造的粒子爆発)」への祈りを込め、舞い踊りながら創作しました。

三代目春駒・小林一彦さんのコメント

 このアルバムで描かれるサウンドスケープもまた、新境地ではないでしょうか。
 めくるめくような官能的世界が連続する「マンドラゴラ」、つづく「夜光貝」を聴いていると、八重山や慶良間、久高島のたゆたう海の煌めきを思い起こせますし、「たまふりエチュード」は「覚醒のビート」が体の芯まで浸透してくるように感じました。
 まさに「びっくり箱」です(笑)。

OFFICE Harukoma(三代目春駒小林一彦オフィシャルサイト):http://www.harukomania.com/

  •       
  • Close
  •